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中部経済新聞連載「マイウェイ」第5回

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言語を超えた対話

三つの幼稚園
幼少期に三つの幼稚園に通ったが、幼稚園の国や場所によって教わることが全然違っていた。
「白山幼稚園」は長久手の隣町の日進町(現日進市)にあった。お姉さんとお母さんを併せ持ったような優しい先生が多くいた。どんなにべったり先生に引っ付いていても怒られないので、調子に乗ってひっつき虫のように先生にくっついていた。甘い思い出がたくさん残っている。
自然と触れ合うことも多かった。園児みんなでレンゲを摘んだ。オタマジャクシを探して、田んぼの周りを散歩した。思い出には四季の田んぼの香りが詰まっている。
北海道の「山手幼稚園」にも楽しい思い出が多い。園内で独自の紙幣をつくって、園児が作ってきたものを買ったり売ったりする特別な行事があった。商売の基礎を教わったような内容だった。
シビアな商売の考え方も教えられた。どうしても欲しい物があって手持ちの紙幣が足りない時は、値切るなど何とか手に入れる手段を考えた。こっそり偽造紙幣を作って先生に怒られている園児もいた。手を抜いて商品を作れば、誰も買ってくれない。園内で大金持ちになれれば、一文無しにもなる。
帰宅する前は、ちょっぴり楽しみがあった。2階から地上に下る避難用滑り台でクルクルっと滑って出口に出るのだ。滑り台から上手に着地できると、下で見守っていた先生からいろいろな色をしたグミやあめをご褒美としてもらえた。なんともやり遂げたような感覚を味わいながら通ったことを覚えている。
海外の幼稚園にも通った。ドイツのキンダーガルテンは個人主義を重視していた。みんなで一緒に何かするというよりは、全員がそれぞれ心の赴くままに自由に動き遊んでいた。私はあめのように透明できれいな色のクリスマス飾りをひたすら作ったことがある。あまりにもおいしそうだったので、こっそりなめて先生に怒られたことを覚えている。
ドイツ語は、当時ほとんど分からなかったはずだが、なぜだか他の園児と気持ちが通じていた。雰囲気などを通して、気持ちが通じていたんだと思う。人と人とのコミュニケーションは理屈では説明しきれないのだろう。
言葉は、内容が分からなくても通じ合えるところが音楽と似ているように感じている。

  • 2023年03月06日(月)19時27分
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