about MINE KAWAKAMIEnglishEspañol

PIANIST | MINE KAWAKAMI オフィシャルサイト | DIARY

記事一覧

中部経済新聞連載「マイウェイ」第23回

アップロードファイル 278-1.jpg

運命的にNHKアニメ音楽制作

モリゾーとキッコロ
 人生で初めてでありながら、ラストアルバムとしてつくった「MINE KAWAKAMI IN LATIN AMERICA」が完成した。マスター音源を京都に持ち帰った。200枚ほどのCDも出来上がった。
このCDを手売りして、少しでも元を取ろうと考えた。知人のつてを使って京都と東京のライブハウスでコンサートを開くことにした。
ライブハウスには友達が友達を連れてきてくれた。おかげで小さな会場はお客さんでいっぱいになった。初めて自作した曲を多くの人に聞いてもらうのは、未熟な自分を丸裸でさらけ出すような勇気がいることだった。
コンサートでは、初めて気がついたこともあった。お客さんが身を乗り出したり、目を閉じて体を揺らしたりしながらそれぞれが自由に音を楽しんでいたのだ。私自身もお客さんも自然と笑顔になっていた。まるでライブハウスの会場の中に優しい中南米の音の風が吹いているような気がしていた。
そのコンサートで偶然の出会いがあった。お客さんの中で一人、CDをたくさん買ってくれた人がいた。その時、その人が誰かは全く知らなかったのだが、後にその人の関係者という方から連絡を頂いた。その連絡で「2005年の愛・地球博のマスコットキャラクターの『モリゾー』と『キッコロ』のNHKアニメの音楽を制作しませんか」と言うのである。
続けて「あなたの音楽はなぜか万博会場である『海上の森』のような美しい自然の響きがする」と言うのだ。もちろん驚いた。連絡をくれた方は、私が海上の森近くの長久手出身ということを知らなかったはずだが、曲に込めた長久手の風景を感じてとってくれたのだろう。
目に見えない大きな運命を感じた。生まれ育った長久手の森や小学校までの長い通学路。そこに本当にモリゾーとキッコロが住んでいて、私が幼かったころから、木々の影からこっそり私を見守ってくれていたのだろうか。私が辛くてピアノから離れそうになっていたところを、モリゾーとキッコロが壮大な仕掛けを企んでくれたのかな、とちょっぴり思った。
ピアノ演奏を続けることを諦めかけていたが、モリゾーとキッコロが再びピアノの前に連れ戻してくれたのだった。

  • 2023年03月28日(火)20時58分
powered by Web Diary