about MINE KAWAKAMIEnglishEspañol

PIANIST | MINE KAWAKAMI オフィシャルサイト | DIARY

記事一覧

中部経済新聞連載「マイウェイ」第47回

アップロードファイル 302-1.jpg

大空への夢、音楽でかなう

スカイマーク機内音楽
長らく「飛行機と関わる仕事をしたい」と小さな夢を抱いていた。きっかけは中学生の頃に参加した航空教室だ。パイロットに憧れる子どもたちが仕事を体験できる特別な教室だった。空港の飛行訓練用シミュレーターに乗ったり、格納庫の飛行機のコックピットに座ることができた。本物のパイロットや客室乗務員、整備士からいろいろな話を聞けた。格好よく優しい人たちに支えられ、空を飛んでいるのだと感じた。
振り返れば日本と欧州を150回以上、欧州と中南米も約50回往復している。気づけば、生活の中でいつも飛行機に乗っている。ふと中学生時代の夢を思い出し、どんな形で叶えることができるのか考えることもある。
夢は思いがけず実現した。航空会社のテーマ曲を作曲する仕事をいただき、スカイマーク(本社東京都)の機内音楽を制作することになった。機内で搭乗時と降機時に流れ、お客様を迎えたり送り出す音楽だ。なお日本航空(JAL)は久石譲氏、全日本空輸(ANA)は葉加瀬太郎氏などが手がけている。
スカイマークからは「機内の雰囲気がすがすがしく爽やかになり、お客さまの心が癒され、青い大空を羽ばたくイメージの曲」という要望を頂いた。ピアノソロ曲として作るのはとても難しかった半面、中学生の頃の自分と重なってワクワクした。
飛行機に乗っている人の姿を想像してみた。仕事に行く人、旅に出る人、愛しい人に会いに行く人。多くの乗客は音楽が流れていることすら気がつかないかもしれないが、優しい空気や香りのように一人一人にそっと寄り添えるような音世界をつくろうと考えた。ピアノの力で狭い機内を快適な空間にしたいと思い、「スカイブルー」という曲をつくった。
羽田空港(東京都)と神戸空港(兵庫県)の格納庫で飛行機の横にグランドピアノを置いてスカイブルーを生演奏する機会もいただいた。大きいグランドピアノがより巨大な飛行機の横に置かれると、まるで巨人の足元にいるアリかゴキブリみたいに黒く小さくて、ややおかしかったことを覚えている。
今も北海道に行く際に時々スカイマークを利用する。機内で自分の音楽を聞くと、わが分身が私の代わりに大空を飛んでくれていると感じる。なんとも不思議な形で、夢が実現するものだなとうれしく思っている。

  • 2023年04月26日(水)17時36分
powered by Web Diary