ピアノとコントの舞台を創出
サンドウィッチマン
お笑いコンビのサンドウィッチマンの大ファンだ。言葉の掛け合いの音程や間の取り方がまるでフラメンコの歌とギター。あるいはラテンジャズのセッションのようだと感じる。何度聞いても新たな発見があって決して飽きない。極上の音楽とよく似ている。
ローマへ慶長遣欧使節(けいちょうけんおうしせつ)の取材に友人夫婦と行った時、ふとサンドウィッチマンのことを思う出来事があった。約400年前にスペインとイタリアへやってきた仙台藩の侍・支倉常長とスペイン人宣教師ソテロは、日本では苦難な運命、悲劇的なイメージがある。しかしイタリアのローマに残されているフレスコ画は、全く違う雰囲気を見せてくれる。支倉常長はずる賢いお代官様みたいに笑っていて、その横で何やら怪しげなことをささやいている悪そうな宣教師ソテロが描かれていた。壁画を眺めているうちに、支倉常長がサンドウィッチマンの伊達さん、宣教師が富澤さんに見えてきたのだった。2人に侍と宣教師のコントをやってもらったら面白いよね、と友人夫妻と話したものだった。
またも運命はその翌月にやってきた。仙台市が主催する都内のイベントでゲストに呼ばれ、ピアノを弾きに行ってみたら、そこにサンドウィッチマンのお二人もゲストに呼ばれていたのだ。しかも、たまたまその日に限って楽屋が壊れ、私とサンドウィッチマンの楽屋が一緒になった。
その際、ローマで思ったアイデアを話してみた。「地元仙台の伊達つながりだし、なんだか面白そうだからやってみよう」ということになった。その後、話はどんどん展開して「ピアノとコント連作・サムライ宣教師クルーズ」というサンドウィッチマンとピアノ奏者の3人の舞台が生まれた。2014年の文化庁芸術祭の出展作品に選出されたその舞台はテレビで中継されNHK番組として放送された。
その後もサンドウィッチマンとの交流は続き、スペインの首都マドリード、コリアデルリオにも来てもらい、スペイン人に向けてピアノとコントを共演した。生まれ故郷の長久手の文化の家にも来てもらって舞台を共にしている。彼らの言語を越えた言葉世界もまた、私にとっては師匠のような存在だ。