今日のひとこと
先月スペインでリリースした「オ・メウ・カミーニョ」のアルバムが予想を超えてなかなか好調で、スペインの国営テレビ「MIRADAS2」という、これまたなかなか結構な番組のゲストに招待してもらいました。明日バルセロナで収録です。
好きなようにして良いと言う事なので、解説付きの喋り弾きをしてこようと思っています・・でも、一体どうなる事でしょう・・・。
セビリア出発のバルセロナ行きの便が少なくて、唯一のバルセロナ行きの便に乗るため、朝4時半起きです。
放送はインターネットでも放送されるので、また皆さんにもご報告したいと思います。
明日は日帰りのバルセロナですが、コルドバではゲットできないお魚が売っているバルセロナ市場で魚を買おうかななんて、アイスボックスだけはしっかり準備しつつ、明日の衣装に困り果てるカワカミなのであった・・・。
「ものすごく美味しいモノを持っていくからお腹を空かして午後2時に来てくれ」
と、最近仲良しになった近所のハム屋さんのご主人カリストから連絡がありました。
集合場所はほぼ毎日のように通っている家の向いにあるバル。
時間通りに行ってみると、バルの中にいるのはご主人のエミリオひとり。予想通りです。
そのエミリオもスペイン人選手アロンソが出ているF1の試合に夢中でテレビの前で静止したままでした。
それから30分くらいして、スーパーのビニール袋を一つ下げたカリストが友達をつれてやってきました。
高級自家製生ハムやサラミ、チョリソー、チーズを豊富に置いている店のご主人カリストが言う「物凄く美味しいモノ」とは一体なんなんだろうと期待が膨らむ中、
「はい!」
とスーパーのビニール袋から出てきたのは、ムール貝とイワシの缶詰一つずつでした。
バルのご主人に皿とフォークとパンを出させ、空腹でお腹と背中がひっつきそうな私に
「まあ食べてみろ」
と缶切で開けて、ぶっきらぼうに缶詰をそのままひっくり返してお皿にドワっとあけてくれました。
このムール貝。タダのムール貝のむき身がオリーブオイルと一緒に缶詰になっているだけの事なのですが、身が閉まっている部分と、フワっとしている部分があって何とも美味しいのです!!!
そしてイワシも、ドバっと皿にあけただけで半分くらいが身崩れして、フォークで触れると更にボロボロになるのですが、またこの身の崩れかたといい、オイルがパンに絡む味といい、柔らかくなった骨といい・・・たとえようもないほど美味しいではありませんか!
これは、訳ありのスゴイ缶詰工場が作っているのか、と思わず止まらぬフォークを置いてカリストに聞いてみました。
するとこんな答えが。
「いや、今週の僕の店のサービス品でね。一つ80セント(85円)だよ。工場って・・・どこにあるかなんて、わかんねぇな。」
コルドバは不思議な所です。
スペインの中でもずば抜けて料理に遊びがないというか、余分なものは入れないと言うか、相手が食い倒れるまで喜ばせようというサービス精神がないというか、食事が終わって残るような出し方をしないというか・・・。
でも美味しいのです。
いや、本当に美味しいんです。レモンも胡椒もスライス玉ねぎも何も添えないで、グチャっとあけただけのボロボロのこの缶詰が。
この美味しさというのは舌で感じる美味しさと言うよりも脳で感じる美味しさなのででしょうか。
なんだか、キューバの時に食べた「7日ぶりに火が使えた日の煮カボチャ」に似ているかも・・なんて思ったのでした。
今、コルドバの街はオレンジの木になった実が色づいてとても綺麗です。
今年はオレンジ大豊作なのだそうです。今だと1キロ80円くらいです。コルドバ人家庭の家に行くと、オレンジ用の箱があって、その中にオレンジが30キロくらい入っています。
愛犬ワサの散歩コースにある公園も今はオレンジやザクロの実が沢山落ちていて、この季節になると散歩しにやってくるワンコ達の「ボール」となっています。
面白い事に、コルドバの犬はどの子もオレンジ大好きで、オレンジを追いかけて遊んで、その後丸ごと食べてしまうワンコもいます。
家のワサはコルドバの血が少ないからか(犬種特定不可能なくらい雑種ですけど)、他の犬の真似をしてオレンジを食べようとするのですが、酸っぱくて食べられないのが悔しくて、オレンジに向かって吠えています。
そして何故か潰れたオレンジを沢山探してきて、その上に転がって自分の体にオレンジをなすりつけています。
なので、散歩から終わって家に帰ってくると、台所もオレンジだらけ、犬もオレンジの香りでいっぱいです・・。
やっぱり日本に帰っている時はひとつも更新できませんでした・・・。
「今回こそは日本に帰っても慌ただしくなく行動する!」
と成田に向かう飛行機の中で誓ったはずなのですが、ふるさとの大地を踏んだ瞬間から嵐のような毎日が始まり、一昨日スペイン行きの飛行機に乗るまで、「前日の夕ご飯のおかず」すら思い出せないほど慌ただしい毎日でした。
2週間の日本滞在でした。今回も色々な事があって、一体どこから書こうかと思うほどですが、今日は千葉県の御宿(おんじゅく)について書きたいと思います。
今から401年前のことです。
現在の千葉県・御宿町の沖で、メキシコに向かう途中嵐にあって遭難したスペインの船の乗組員を村人が助けた事が発端となって今でも御宿の街とスペインの間で様々な友好交流が行われています。
そんなご縁で、11月7日に御宿町と在日スペイン大使館の共催で御宿町公民館演奏会に呼んで頂きました。
御宿に行ったのは今回で2度目になるのですが、この街、私は大好きです。
美しい海岸のある風景はもちろんのことなのですが、先回も同じように思ったのですが、この街で出逢う人のどこか不思議な優しさと魅力に惹かれます。
そういえば、2年前に初めてこの街に行った時にこんな事がありました。
その時は、共演したスペイン人フラメンコ歌手も一緒で、座礁したという海が見える小高い丘に登った時のことです。
突然、フラメンコ歌手が海を見て一人で歌い始めたのです。まるで誰かに歌わされているかのような、そこにいた全ての人の全身が震えるような、そんな歌声に私も身動きが出来なくなるほど心に響いた思い出があります。
でも、これを語らずして御宿は語れないというほど大切なことがもうひとつ。
この町の名物のひとつ、伊勢海老です。
これが、どんなに美味しいことか・・・・。
せっかくなので、コンサートでもキューバの伊勢海老事件(厳密に言うと、あちらは伊勢海老ではなく、ロブスターですが)を描いた曲を演奏しました。
曲は「あるキューバの海岸で、一軒しかないレストランに入って「伊勢海老定食」を頼んだら、そのままウェイターさんがシャツを脱いで獲物を探しに海に入っていったままなかなか帰って来なかった」というハナシを、自分でピアノ効果音を演奏しながら話す、という曲です。
演奏会終了後のこと。
私が演奏中にエビの話をしすぎたが為に、公民館の方が気を使ってくださって
「御宿の伊勢海老を食べませんか」
と誘ってくださったのです。
そこの伊勢海老の美味しかったこと。
「鬼殻焼き」と言って、伊勢海老を殻ごと背開きにして焼いたもので、それを手でバリバリと食べるという豪快かつ繊細な料理です。
エビミソがまた果てしなく良い味を出していて、絶品なのです。
この日、演奏会ではあれだけ喋り倒しておきながら、エビを食べている時だけ静かな私だったと一緒に来ていたスタッフに呆れられました。
ちなみに料理をいただいたお店は「大野荘」というお店で、ご主人の大野さんによると、これからはアワビが旬なのだそうです。
御宿町の町長さん。御宿町役場の皆さん。公民館の皆さん。演奏会でお世話になった全ての皆さん。
本当にありがとうございました。
来週からまた日本なので、そろそろ荷造りです。
でも最近、荷造りするほど荷物もなく、友達に渡すお土産のオリーブオイルだけでトランクは結構ガラガラだったりします。
今月から今年のオリーブの収穫が始まって、コルドバのお店でもしぼりたてのオリーブオイルが入荷されるようになりました。
「オイル」と言うよりは、「オリーブのしぼり汁」といった感じで、真緑不透明液体。果てしなく濃厚で甘味と苦みと酸味が程良くあって私は大好きです。
トマトサラダにすると
「オリーブオイルがかかったトマト」
というよりも、
「トマトにかかったオリーブオイル」
という料理名にしたくなるような味です。
話は全然かわりますが、24日に放送されるNHKハイビジョンの「猫のしっぽ、カエルの手」で、先日の清水寺舞台のピアノコンサートが放映されることになりました。
是非ご覧ください。私は丁度その時間飛行機に乗っていて見られませんが、どんな映像になったのかちょっと楽しみです。
それでは行ってきます~。
夕べの最終でマドリッドからコルドバに戻りました。
ニューアルバムの発表記者会見も無事に終了し、その後のガリシア寿司立食パーティも美味しかったです。
ガリシア寿司・・どんなものが出てくるのかと思ったのですが、ガリシアのタコや豚のモモ肉をボイルしたラコンなどがネタになっていて、結構楽しかったです。
マドリッドで3年前から「世界で一番小さいお寿司屋さん」というお店を経営しているヨウカさんという素敵な日本人女性がお寿司を握ってくれました。
しかも魚介類の美味しいガリシア産の白ワイン「アルバリーニョ」というのが、これまたお寿司とよくあって思わず右手にニギリ、左手にワインでニッコリ・・・。
記者会見で凄く嬉しい事がありました。
この日の為にサンティアゴから飛行機でやってきてくれた、ガリシア州政府のエライ方、セニョール・ドクトル・ロベルトさんから、1年間続いた、「巡礼の道大祭祝賀年」のファイナルガラコンサートに出演するよう招待してもらったのです。
来年2月、聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラの大劇場で、それもサンティアゴ交響楽団をバックに、私が作った「サンティアゴ デ コンポステラ」を演奏することになりました。
しかも、次回の「巡礼の道大祭祝賀年」は11年後。このファイナルガラコンサートでの出演に選んでもらったのはガリシア州出身のオペラ歌手と、ニッポン出身の私のたった二人の音楽家だけです。
「バンザーーーーイ!」
「カンパーーーーーイ!!」
と、マネージャーのヘマちゃんと手を取り合って、ワインで乾杯しながら大喜びの大騒ぎ。
全てがお開きになって、ヘマちゃんに駅まで送ってもらい、マドリッド発セビリア行きの新幹線の中で、トレドを通過するあたりまでは一人でもハッピー気分100パーセントでした。
「いやしかし・・・これから自分のオリジナル曲をフルオーケストラ用に全部編曲してオケ譜に書き替えるってことは・・・・え、で・・・指揮も私・・・?」
トレドを超え、シウダーレアルのあたりを通過する頃にはすっかり酔いもさめ、冷や汗が出てきたのでした・・・。
ついに刷り上がりました!
ニューアルバム「オ・メウ・カミーニョ」。
今年スペイン巡礼の道ツアーで初演した新作のピアノソロアルバムです。
明日20日はマドリッドのスペイン著作権協会本部にて記者会見とミニ演奏会です。
このCD発売の為に、ガリシア州や巡礼の道事務局からもエラい人が何人か来てくれる予定で、記者会見と演奏会の後はガリシアワインとお寿司の立食パーティも準備万端!!
このCDは、私が歩いた巡礼の道の風景、修道院、人、香りなどをピアノで描いたオリジナルピアノソロ曲集です。
今までのピアノ曲の中では一番クラシック音楽に近く、一曲一曲の長さも今までより最も長いものですが、私個人的には一番今の自分に近い音楽だと思っているアルバムです。
日本での発売日は未定ですが、このスペイン版をを日本の皆さんにも是非聴いて頂きたいと心から願っております。
近いうちにホームページでお知らせする予定です。
明日からマドリッドに2泊ほど行ってきます。
今日はコルドバの北側にあるペドロチェ山脈へ友達と愛犬ワサを連れて散歩に行って来ました。
コルドバ市内からは何となく殺風景に見える山脈なのですが、実際山に入ってみると見事な自然が広がっていて、なかなか綺麗な所です。
夏、気温が50度近くになるコルドバ市の猛暑から逃れる為に昔から別荘地としても利用されてきている場所です。市内からは車で30分程の所です。
この山脈にはいくつものハイキングコースがあるのですが、今日は偶然発見した道を歩くことになりました。
この道。行っても行ってもドングリが鈴なりの大木ばかりが茂る深い森で、大木の影になる下には野イチゴやマドローニョ(イチゴの木)が生えていて、更にその下の地面には熟れて落ちたドングリがびっしり。・・なので森中、鳥だらけです。
時々白い壁の古い民家があって、中をのぞくとリンゴやナシやオリーブの実がたわわになった庭が広がっていました。そしてその庭に泥棒が入らないよう柵の役割を果たしているのがサボテンで、このサボテンにも沢山の甘い実がなっていました。
さて、この大木というのが「コルク樫」という木で、名前の通りコルクの原料となる木です。
面白い木で、まるで木がもこもこの毛皮を着ているような感じで、この毛皮=木の皮をメリメリっとはがすと、そのままベロっと剥がれるのです。
このコルク樫。木の皮は数年に一度はがしてコルクに。
毎年収穫できるドングリはイベリコ豚の飼料に。その大木の下にできる影はイベリコ豚を放し飼いにするのに絶好の環境を
作り・・・そしてこの木が生える土地を持っている地主は数年に一回の皮剥がしと、放っておいても勝手に育つイベリコ豚を放し飼いにして生ハムにする直前に見つけ出すだけ・・大して手間をかけずにしっかり大儲けOK。
一石数鳥の優れモノの木なのです。
スペイン全国の中にはイベリコ豚の生ハム産地というのはいくつかあって、このコルドバの北の山脈もその一つとして知られているのは、やはりこれだけの上等のドングリの巨木が生えているからだと思いました。
ワサはどう言う訳かこのコルクの皮に夢中で、落ちている皮を拾ってきては興奮して噛み砕いていました。そして夢中になってガシガシと噛んでいるその後ろをウサギがピョンピョンと数匹通過。その後イノシシまでも通過・・。
こらーッ!犬らしく追いかけんか~~!
最近スペインで「お!」と思う旨いモノに出逢いました。
ムルシア地方にあるカラスパラ村で作られたお米です。
ムルシアはイベリア半島の南よりちょっと東の海側にある、果物や野菜が豊富に実る州です。
マドリッドからは車で4時間ほどの所にあって、カラスパラ村に入ると、至る所に量り売りの米屋さんや米料理のお店が沢山あります。
美味しいのはこの村で生産されている「ボンバ」という品種のお米です。その中でも特にズバ抜けて美味しいのは玄米です。
甘味をはじめ、お米が持ち得る全ての味が最大限に詰まった米で、初めて食べた時にはその味の濃さにビックリしました。
スペイン全土で欠かせない食材のお米。地方ごとに米料理があって、それを「パエリア」と呼ぶ地域や「アロス」という地域など名称は色々で調理方法も色々です。
でも、どうも私としては最近少々大人(?)になったのか、学生の頃ほど
「パエリア サイコ~♡」
と鬼のようにガッツリ食べられなくなりました。
調理法を見ればわかるのですが、オリーブオイルの使用料が半端じゃなく多い場合が多いのです。
コルドバの伝統コメ料理は「ペロル」と言うのですが、鶏肉、豚肉、ウサギ、玉ねぎ、赤ピーマン、トマト、ニンニク、アスパラ、アーティチョークなど、旬の食材を1カップくらいのオリーブオイルで1時間ほど弱火で炒めて、それに水を加え濃厚なスープを作ったあと、十字架を切るように「十」の字に洗わないお米を流し入れ、沸騰した後に20分ほど蒸らして作ります。
このペロル。確かにメチャ旨なのですが・・・我を忘れて満腹になるまで食べると、後で間違いなく後悔することになります。
どうもオリーブオイルをたっぷり吸ったお米というのは胃の中で倍増するのではないか、という気がするのです。
科学的根拠は全然ありませんが。
カラスパラのボンバ米。あれこれと試した結果、一番美味しい方法は「玄米粥」ではないかという結論に至りました。
それも、水に漬けてふやかした玄米を、炊く前にすり鉢かミキサーで潰して、それから弱火でじっくり炊く方法です。それも2度炊きが更にお米を甘くするような気がします。
・・なんて実験しながらピアノを弾いているので、曲が出来上がって弾いてみると、その時していた料理の味がフレーズと共に一緒に繋がっているので、結構暗譜が楽だったりすることがあります・・・。
シルビアという友達がいます。
彼女は10年前に夫の浮気が原因で「家庭内別居」を始めました。
夫がどれだけ許しを乞うても、二人の幼い子供がどんなにお願いしても、シルビアはその時の屈辱を忘れることが出来ません。
でも、子供が両親なくして育つのは可哀想だ、という理由で同じ家の別々の部屋で生活をしていました。
彼女の元ご主人は非常に優秀なビジネスマンで恐ろしいほどハンサム。某大会社の支店長として数年ごとに赴任先が変わり、その度にその国の首都の最高級住宅地で運転手・料理人・世話係付で大豪邸に住んでいます。
美人で社交的で英語もフランス語もスペイン語も堪能なシルビアは、
「今までよりももっと贅沢でもっとリッチな生活をする」
と心に決めて、毎日のように大使館が主催するパーティや会員制のクラブに通って将来の夫を探し続けました。
ところが、さっぱり恋人が見つかりません。
恋人を探しに毎晩のように運転手付の車でパーティに出かけるシルビア。
大豪邸に住んでいるとはいえ、自分の車と運転手を毎晩使われ、お給料の半分は取り上げられている元夫の堪忍袋の緒がある日、ついにブチ切れたのも無理はありません。
「頼むからこの家から出て行ってくれ!」
この言葉にシルビアは大激怒して、「精神的ダメージを与えた」として離婚訴訟まで起こし、スッタモンダの挙句の果てにこの夫婦は(やっと)離婚を成立させたのでした。
夫と一緒に暮らした大豪邸の家具をほとんど取り上げて、子供二人と祖国イタリアに戻ってきたシルビア。夫も、この引越をきっかけに赴任地が変わることになり、メキシコへと移って行きました。
ところが、シルビアは長年海外で貴族のように暮らしていた生活とは全く違うイタリアの下町暮らしに1ヵ月で嫌気がさしてしまいます。
今までは東京、ニューデリー、リマ、ワシントンなど、外交官の子供たちが通うフランス語スクールに行っていた子供たちも
「こんな汚くて不良だらけの小学校には行けない」
と二人揃って登校拒否。
ついに大きな決心をしたシルビアがある日電話をかけてきました。
「子供たちはメキシコにいる父親の元に送って、私はパナマで仕事を探そうと思うの」
パナマで仕事???あれだけ離れたくなかった子供たちを、あれほど許せなかった父親の所へ手放す????
思わず私も訊き返してしまいました。
彼女の理由はこうです。
元夫よりも金持ちの夫はゼッタイ見つけるが、思ったより簡単に見つからないので、とりあえず自分で働くことにした→子供たちには良い教育が必要なので、メキシコシティーのフランス語学校に通わせたい→毎週末、子供に会うためには、飛行機で数時間で行ける所が良い→パナマならメキシコから近いし、景気もイイらしい→そうこうしている内に恋人ができるであろう・・
返答不能の私に
「じゃ、行ってきます」
と言って彼女は職探しに中米パナマへと旅立ったのでした。
それから2週間が過ぎた今日。
シルビアから電話がかかってきました。受話器の向こうの彼女の声はボロボロで泣いています。
パナマに着いた彼女は、元夫の仕事仲間の繋がりを使って片っ端から会社面接を受けてきたのに、全部ダメだった・・と言うのです。
「一体面接で何て言ったの?」
と尋ねると
「①一カ月最低5000ドル(40万円)のお給料が必要
②子供たちがメキシコシティにいる間だけ仕事がしたい」
・・・仕事経験も資格もない彼女がいきなりその条件・・・そりゃまあ、ダメだろうな、と思いながらも聞いていると
「一体私が何をしたって言うの!?どうして神様は私をこんなに苦しめるの!?幸せになる方法を教えて!!!!」
と受話器の音がさく裂しそうな勢いで叫ぶのです。そして私が何を言っても、もちろん一言も聞く気はナシ・・。
一体彼女の本当の幸せとは何なんだろう、彼女は本当は何が必要なんだろう、と受話器を置いてから私も考えてしまいました。
解決法:
①人任せに金持ちになる事は諦める
②元夫の所に戻る
③・・・・?
皆さんだったら彼女にどうアドバイスしますか?
たった数週間前までは気温が40度もあったのに、
「夏、これにて終了!」
と宣言されたように一気に寒くなりました。
そしてとうとう私も風邪をひいた模様・・。頭がぼーっとして何も手につきません。
明日には明日の風が吹くと言う事で、今日はこのまま眠りたいと思います。
不思議な事は続くもので、一昨日またしても偶然とは思えない出来ごとがありました。
8月の巡礼の道コンサートツアーでサンティアゴに行っていた時の事です。
巡礼者と観光客でいつも賑っているこの街には何百という数のレストランやバルがあって、私のスペイン生活の密かな掟
「一街一バル」
に従い、サンティアゴでもMYバルを決め毎日のように一杯呑みに行っていました。
ミネバルに選定するにはいくつかの決まりがあります。
①小さくて古い
②ご主人自身がカウンター越しで料理を作っている
③地酒を豊富に置いている
④観光ブックに載っていなくて地元のオジサンが多い
そんな小さな、思わず誰もが通り過ぎてしまいそうなほど鄙びた小さなバル。そのカウンターの隣でワインを飲んでいる夫婦に
「もしかしてカワカミさんですか?」
と声をかけられました。夏休みを利用してサラゴサという遠い街からやってきた老夫婦で、前日の私のコンサートに行こうとしたところ会場を間違えて演奏を聞けなかった・・と言うのです。
そんな素敵な出逢いもバルの楽しいところで、このご夫婦としばしワインを飲みながら色々な話に花が咲きました。
ご主人はサラゴサで画廊を営み、奥さんは絵描きというご夫婦です。
すごいのはここからです。
コルドバは、さすがに住んでいる街なので「一街一バル」とはいかず、行きつけのバルが複数あります。
天麩羅が食べたい日のバル、赤ワインが飲みたい日のバル、しんみり静かにお茶をしたい日のバル、賑やかにおしゃべりをしたい日のバル、パティオのあるバル・・・。
昨日はその中の「しんみりお茶のバル」に行っていました。
このバルがこれまた何処よりも鄙びていて、小さく汚く、オジサンばっかりで、埃で半分黒ずんだ闘牛士のポスターが壁中に貼ってあって、照明は上から下まで蛍光灯・・・という、観光客はまず来ないだろう、というバルです。
このバルのカウンターで新聞を読んでいたら、突然横から声をかけられました。
「カワカミさん・・?」
その声の持ち主の顔を見て我目を疑いました。
サンティアゴで出逢ったサラゴサの老夫婦なのです。
たまたま連休でコルドバにやってきて、たまたまバルに入ったら私がいたのだと、本人たちもビックリしていました。
この二人とはすっかり意気投合してしまい、今晩は「意図的に」待ち合わせをして、夕食を食べに行くことになりました。
小さな出来事かもしれないけれど、説明のつかない再会ほどこの世で素敵な事はないな、と思います。
そしてコルドバに戻りました。
日記を更新しようと思いつつも(ホントです)、あまりにも目まぐるしい毎日にアワワーっとなっている間に気がついたら今日になってしまいました。
さすがに毎月のように京都とコルドバを往復していると時差ボケが慢性化しそうな今日この頃です・・。
おかげさまで、今年も無事に清水寺舞台の演奏会が終わりました。
6年目の今回も不思議な事に雨が降ることなく、それは美しい夜空が広がりました。
色々な高さの雲が様々な早さで流れ、その合間に時々煌めくように星が姿を見せる夜空は、言葉にならない程美しく、そこを吹く風が音羽の滝の水の音や虫たちの声を色々な角度から運んで来てくれました。
舞台での演奏会ではピアノ音を広げるためのマイクを一切使用しないのですが、これがまた信じられない事に、普通の常識では考えられないような美しい音となって響くのです。
毎年恒例の、演奏会後半からの「席替え」では今回初めて奥の院(舞台から見て音羽の滝の反対側にある舞台)まで移動していただけるようにしたのですが、あんなに遠くにいてもピアノの音が聞こえるのです。
舞台を組む沢山の柱や、舞台の下にある空間が完璧な音響効果を生むようです。
清水寺の大西執事長が6年前に言った言葉が今もこの演奏会の基本になっています。
「何十年・何百年と生きてきた「木」が何百年前に舞台を建設する為に切られた。その段階で木としては「死んだ」筈なのに、今も舞台と寺を支えると言う形で「生きて」いる。
なぜならその「木」には、この寺に祈りに来る人々の思いという「気」が入る。それが「木」を何百年と生かす魂となり、これからの何百年も生かせていかなければならないからだ。」
・・このような言葉でした。
個人的にまだまだ反省すべき点は沢山あるのですが、来年の演奏会を目指して頑張りたいと思います。
演奏会には素敵な友人や懐かしい友達も沢山来てくださいました。
NHK番組「猫のしっぽ、カエルの手」の主人公、ベニシアさん。彼女は本当に自然の妖精がたくさん背後(?)についているような不思議な人で、ピアノを演奏するとまるで自然の風がふくかのように深い呼吸をしながら聴いてくださいます。その呼吸があまりにも自然で、いつの間にか私がピアノを弾いているのだか、ベニシアさんが弾いているのだか一瞬わからなくなるような瞬間があるのです。
愛・地球博のマスコットキャラクター「モリゾーとキッコロ」のアニメの監督をされた高橋良輔さんも来てくださいました。この方もこれまた面白い方で、一緒にいる私までが何故か楽しくて笑いが止まらなくなるという、「アニメの妖精」が背後に盛り沢山いるに違いありません。
そして、北海道から九州まで、遠くからこの日の為に京都に来てくださった皆さん。長い入院生活を終えて夫婦でお祝い旅行として来てくださった方、お忙しいなかこの日の為に何カ月も前からお休みを取ってきてくださった方・・・皆さんの一人一人のお陰で無事に演奏会を終えることができました。本当にありがとうございました。
余談なのですが、その数日後に面白い出来事がありました。
大好きな湯葉を買いにいつものお店に行く途中、日頃通らない道を自転車で通ろうと急に思い立ちました。
するとその道に初めてみるお店、その名も「わん」という看板が目に入りました。
名前のとおり、犬の専門店で、思わずスペインで留守番中の愛犬「ワサ」にお土産を一つ買おうと中に入りました。
お店の奥から出て来た、初めて合うはずの店主に不思議なほど親しみと懐かしさを感じて
「どこかで会ったことがあるような・・・でも思い出せない・・・」
と思いながら、そのご主人と美しい奥様と一緒に話がワンコ話からスペイン話とどんどん盛り上がって行きます。
このお店、なかなか凄いのです。
ワンコが必要とする全てのグッズだけではなく、老いたワンコを介護する為の器具の専門のお店でもあり、またワンコと一緒にお茶できるカフェもあります。しかも京都発、「犬用酸素カプセル」(初めて見ました)まで置いてある「犬の健康と介護を考える」お店です。
とっても素敵なこのご夫婦と話は清水寺で演奏会をしたという話にまで発展しました。
ご主人が、「子供の頃は清水寺の近くに住んでいて、大西さんと子供同志、よく遊んだもんだ」
というではありませんか。
世界は実は小さいのかもしれませんね、などと話しながら「また今度ゆっくり遊びに行きます」とお名刺をいただきました。
このご主人の名刺、よーーく見てみると、「ばんばひろふみ」さんと書いてあるではありませんか。
懐かしも懐かしくないも・・・。ばんばんじゃないですか~~!!まさか、こんな所にいらっしゃるとは!!!
大変失礼いたしました(私が一方的に懐かしいだけでした)。
話が少々別な方面に行きましたが、犬の介護器具が必要な方、ワンコと共にコーヒーを飲みたい方、是非「わん」に行ってみてください。京都御所の南にあります。
京都市中京区丸太町東洞院東入ル674
愛犬倶楽部 わん
http://aiken-wan.com
明日からちゃんと更新します(ホントです)。
一昨日、京都に戻りました。
飛行機が到着した時の関西空港の天気はバケツをひっくり返したような大雨と雷で、素敵な帰国となりました♡
飛行機はいつもフランクフルト経由のルフトハンザ航空を利用するのですが、毎月利用していると客室乗務員でも顔見知りになる人がいます。
その中に一人、スペイン人の客室乗務員がいます。
アルベルトという、マドリッド出身の男の子で、どういう訳か、一度マドリッドのひなびたバルでバッタリ再会したことがあるという不思議な縁のある人です。
アルベルトも、ルフトの客室乗務員には全く珍しくない正真正銘の同性愛主義者で、少女マンガに出てくるような恐ろしいほど美しい男性です。
この彼に面白い話を聞きました。
客室乗務員の間で人気のある路線というのがランキングされていて、一番人気があるのは
フランクフルト⇔日本路線
なのだそうです。
逆に一番人気が無いのが、
メキシコシティ⇔フランクフルト
なのだそうです。
その理由がちょっと笑えるのです。
日本人と言うのは本当におとなしくて行儀のいい民族で、フライト中も全員大変静かにおとなしく座るか寝るかしていて、問題行動を起こす人は皆無。手荷物も少なく、我先にと争って手荷物棚を争奪するような事はありません。
そして一番客室乗務員に好まれる理由は、選択肢を与えると、その範囲内で回答する事、なのだそうです。
「コーヒー、紅茶、どちらがよろしいですか?」
と訊くと、必ずコーヒーか紅茶のどちらかをください、と反応するのだそうです。
ところが大変なのはメキシコシティ行きの機内。
バカンス気分の西洋人と、呑み放題なら今のうちという南米人でギッシリ詰まった機内はシートベルトの着用サインが消えると同時に宴会状態。
毛布も枕もトイレットペーパーも食器トレイまで持って行こうとする人に、怒らせないように引き留めるだけでも大変なのだそうです。
「コーヒー、紅茶、どちらがよろしいですか?」
と言っても
「ウィスキー」ならまだしも、「XX酒造のテキーラが無いとは一体どういう事だ」とか搭載されていないような注文や苦情が続発。
この路線のフライトではアルコールが完全に底をつくのだそうです。
そして、挙句の果てに酔っ払ったゲイには絡まれるし誘われるしで「まるで悪夢のようなフライトなのよ」と、アルベルトは語っていました。
確かにそう言われてみれば、先回コロンビアに行った時も、機内食の前に
「お飲物のおかわりはありませんので、どうぞゆっくり飲んでください」
という聞いた事のないアナウンスが大音量で流れていて、マネージャーのヘマちゃんと思わず二人で笑った記憶があります。
それにしても、アルベルトの言うとおり、フランクフルト発関西空港行きの飛行機は本当に静かで、仕事が一段落した乗務員の人たちのおしゃべりが機内の中で聞こえる唯一の音でした。
日本に帰ってくると、日本に向かう飛行機の中でさえ、何を見ても聞いても感じても
「やっぱり日本はいいなぁ」
と思います。
9月半ばになった今日もコルドバは最高気温が40度以上。
洗濯物を干しに屋上テラスに上がって、順々に干して行くのですが、最後の洗濯物をかけた頃には、最初にかけた洗濯物がほとんど乾いている、という暑さです。
魚介類三昧だったガリシア地方からコルドバに戻って、久しぶりに市場に買い物に行ってきました。
すると、今までは気にならなかったのに、ガリシアの海の幸を見てしまった後にコルドバの市場のお魚を見ると・・・何ともヤル気のないゆるーい地中海系お魚ばかり・・・。
しかも、こちらは日本のように、釣った後の魚の処理が徹底していないので、全体的に皆、目もウロコもドヨーーーンとしていて、お刺身になりそうなお魚は一匹たりともいません。
もちろんその代わり、ガリシアにはない果物や、新鮮なお野菜はたっぷりあるので、それはそれで所変われば・・と言う事で、それぞれの良さはあります。
ちなみに、新鮮なお魚がないコルドバだからこそ美味しい魚料理がいくつかあります。
その一つはシマガツオのフリッターです。
味はほとんど「鳥の唐揚」。でも、漬け置く材料はスペインならではです。レモン・塩・オレガノ・ニンニクなどで香ばしく一晩下味をつけた切身をカラリと揚げた絶品です。
どうして、このシマガツオという魚を「カツオ」と呼ぶのか思わず疑問に思うほどカツオから掛け離れた魚で、市場でみると際立ってボケっとした魚ですが。
コルドバでは、一キロ500円くらいで売っています。ちなみに、イワシは一キロ300円です。
ガリシア地方の最西端に近い漁村でオグロベという街に行ってきました。
魚介を食べるのならあそこに限る、と本場のガリシア人が言うくらいの場所です。
はじめ聞いた時は江戸時代のオジサンの名前かと思いました。おぐろべえ。O GROVEです。
この漁村を案内してくれたのは、11歳でオグロベの漁師となったパコ。彼の案内で、まず漁船が続々と到着する競市に到着。次から次へと運ばれてくる、タコ、魚介類、アジ、ヒラメ、イカ、カワハギ、サメ、蟹、そして見た事もない魚たちの山です。タコなどは全部まだ生きていて、競り落とされる箱の中から私達をジッと見ているのです。貝はマドリッドで市場でもお目にかかれない程立派で、二枚の貝が閉まらないんじゃないかというくらい肉厚です。
それからパコの親戚が経営するというホテルの食堂へ行きました。まるで日本の旅館とおなじで、食堂と言うよりは夕食宴会場。
宿泊客が続々と部屋からお洒落をして会場に集まってきます。ほとんどが中年層で、喋り倒すオバチャンばっかりでした。
しかしここで食べた料理は、おそらく今まで食べたスペインの魚介類で一番美味しかったです。
ベルベレッチョ(ザル貝)をワインで蒸したもの、茹でたトマトの中をくりぬいて、蟹をつめたもの、手長海老のボイル、焼鯛。焼きたてのパンに大地と雨の香りがするサラダ。
そして最後には、ケイマーダと言う、ブドウの蒸留酒にコーヒー豆をいれて、火をつけ、火が消えるまで呪文を唱えると儀式デザートで食事は終了です。
この呪文がすごくて、ガリシアの人は皆まるでお経を読むように暗記して唱えられるのです。
ガリシア語なので、全部の意味はよくわかりませんでしたが、死んだ霊を呼んだりしているのは私でもわかるほどで、思わず満腹ながら鳥肌が立つデザートタイムでした・・。
おぐろべえ。是非お時間のある方は行ってみてください。
ちなみにこのホテルはCASA JUANITA という名前のホテルで、一見風情はほとんどありません。
でも、お店のご主人・奥さんをはじめ従業員は皆本当に心温かくて、最高のおもてなしをしてくれるはずです。
ああ、おぐろべえ、また行きたい・・・。
巡礼の道コンサートツアー第二ラウンドが明日から始まります。
今回の最大コンサートは24日。
聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラでの野外コンサートです。
ボナバル広場で夜10時開演です。
演奏会の後は3,4日かけてポルトガルを縦断しながらアンダルシアに戻ってこようと思っています。
そして、いかなる食材が現れても万全に対処できるよう、ミネ包丁もバッチリ荷物に詰めました。しかし・・そういえば演奏会で着る衣装を何にするか決めるのをすっかり忘れているじゃありませんか~!
土曜日か日曜日に文明社会に戻ってきますので、それまでは日記を(またしても)お休みさせてください。
もし今、偶然にサンティアゴに居る方がいらっしゃたら、是非演奏会にいらしてください。
入場は無料、客席は沢山の花が咲く芝生です。寝転がってもいいし、夕日や星を見ながらでもいいし、ノンビリ自由に聞いていただける演奏会になればいいな、と思っています。こちらではなかなか日本の方には会えないので、是非お声をかけてくださね。
それでは行って参ります!
巡礼の道コンサートツアーが始まって以来、ほとんど毎日、ラジオ番組の電話インタビューを受けています。
大体が生電話によるインタビューなのですが、こればかりは逃げたくなるほど、本当に苦手です。
全国放送のラジオ番組だと、標準語を話してくれるので何を言っているのかわかるのですが、ガリシアのラジオ番組だと、ガリシア語になるので時々何を質問されているのかわからず、生番組でシーーンとした恐ろしい瞬間を何度も作ってしまい、インタビュー後数時間は自己嫌悪で鬱になって、ピアノを練習していても自責の念にかられてまるで集中できなくなり、食欲すら落ちる有様です。
ところで、ガリシア地域で放送されるラジオ番組では毎回必ず聞かれることがあります。
「ガリシアと日本が共通しているところはどんな所ですか?
思わず
「タコが大好きな所です」
と答えたら、アナウンサーが大ウケしてしまい、そこからピアノの話は飛んで、ゴハン話コーナーになってしまいました。しかも、何故かテーマが食だと、すらすらと答えられる私って一体・・・。
ああ、今日もこれから一つ恐怖の番組が待っています。
どうか、簡単な質問だけにしてください・・。
ガリシア地方の内陸にある都市、オウレンセでも演奏会をやってきました。
ここもまたローマ時代から栄えた古い街で、古代から今日に至るまで温泉の街としても知られています。
早朝からスタッフは機材を搬入したり、舞台を作ったりしていて、私もお昼過ぎに会場となる大聖堂前広場に行ってみました。
広場は石畳がびっしり敷き詰められていて、四方には古い建物や教会の壁になっているので、音響は最高。その広場の真ん中にはマリア像と十字架の塔がたっていました。
この広場がなかなか不思議な所で、なんとも言えない静けさがあって、他の場所とは何処となく違う雰囲気がありました。
夜10時にスタートしたリサイタルも本当に予想を数百人も上回るほどの沢山の方が来てくれました。椅子に座りきれない人たちは石畳の上に腰をおろしてくれて、それはそれでとてもリラックスした雰囲気でコンサートが進みました。
それにしても、オレンセの聴衆の集中力もやっぱり凄かったです。野外に何百人もいるのに、誰一人咳も、物音も、一切の音をさせることなくジッと聞いてくれるのです。
ところでこの静かな広場。やっぱり何かがある(いる?)のです。滅多に痛くならない自分の肩がヒビが入ったのではないかと思うほど重く痛くなる瞬間が本番前にあって、ずっと一緒に行動しているマネージャーのヘマちゃんも、同じように私の横で首を回したり、肩をもんだりしています。
そしてどういうわけか二人同時に、
「うわ~何だか知らないけど、チーズが食べたい~!!」
と突如2人の意見が一致。楽屋として解放してくれたオウレンセ市役所の来客室からヘマちゃんが近所のバルに出前で大至急チーズのサンドイッチを携帯電話で注文してくれました。本番15分前です。
「まいど――サンドウィッチお待ちどうさまです―!姿が見えませんけど、今どちらですかー?」
と、それから間もなくヘマちゃんの携帯にバルの主人から電話が。
あわてて窓を開けて外をみると、出前のオジサンがサンドウィッチの皿を持って携帯で話しながら特設ステージに立ってキョロキョロしているではありませんか。
これにはさすがに全員で笑ってしまいました。
不思議な事にチーズが肩コリに効くのか、ヘマちゃんも私もこの一口で体が楽になり、無事演奏会を迎えることができました。
後から聞いた話なのですが、演奏会場だった広場はローマ時代の墓地の上に作られているそうです。
ま、そういう話を始めると、古い街はどこもお墓も沢山あるわけで、私が住んでいるコルドバの家の下にだって見事な西ゴート族の墓がミイラごと入っているし・・と言う事で、あまり関係ないかな・・・?
と言う事にしたいと思います。
夕べ、8月のコルドバでは考えられない雨が降りました。それも、愛する稲妻と雷と一緒です。
お布団に入りながら、久しぶりに聴く雨音と稲妻の輝きを一つたりとも逃したくなくて、眠りに落ちないようにずっと耳を澄ましていたのですが、不思議な考えが頭の中を風のように巡る夜でした。
「世界で一番好きな音はなに?」
と訊かれたら、
「雷」
と迷わず答えたくなるほど、雷の音が好きです。
私が生まれた時、丁度夕立ちで雨が降って物凄い雷が鳴り響いていた、と母から以前聞いたことがあります。雷の音が好きな自分と、何か関係があるような気がして仕方ありません。
そういえば、父も昔から夕立ちが近づいてくると「さあ、飲むぞー!」とか言って、普段よりも豪華なお酒を出してきて雷を肴に呑むと言う、雷大好き親父です。
そして、夕べ、頭の中で巡った色々な考えの中で、今まで一度も思ったことのない不思議な風景に出逢いました。
いつか、自分が年をとって死を迎える時も雷が鳴っていて、その美しい音に耳を澄まし、その雨が降り落ちて嬉しそうに揺れている木々や森を想像しているうちに、気がついたら自分も体から抜けて、風と一緒になってその森を上から見ている・・・そんな、不思議な映像です。
この夢はとてもカラフルで綺麗だったので、今度ピアノの音に描き変えて曲にしてみようと思います。
でも、本当は全然違ったりして(汗)。